横綱審議委員会が横綱に推薦する条件として「大関で2場所連続の優勝」を原則とするなどと内規で定める中、貴景勝は「チャンスは何度もない。やれることはすべてやる」と人生をかけて春場所で綱とりを目指す覚悟を示していました。

そのことばの通り、この春場所に向けては懸命に準備を進めてきました。

一番の持ち味である突き押しでの一気の攻めを磨くだけではなく、攻めきれない場合を想定して、四つに組んで寄り切ったり、投げで崩したりする稽古も重ね、どんな相撲になっても勝ちきる「対応力」を養ってきました。

さらに初めて綱とりを目指した2年前の初場所では「力み過ぎというか全部気負いにいってしまった」と稽古で追い込みすぎたことを教訓に、ここ最近は「自分がいちばんいい状態で臨める状態を作る」とみずからの体調と相談し、体と技を鍛えてきました。

日ごろから大切にしてきた「準備」を入念に行い、春場所に臨んだ貴景勝でしたが、綱とりを目指す場所は厳しいものになりました。

初日にはここまで2場所連続で敗れていた小結・翔猿にはたき込まれ、黒星スタート。

3日目の平幕の正代との一番では白星を挙げたものの左ひざを痛めましたが、小さなころからの夢だった横綱昇進に向けて痛みをおして出場を続けました。

貴景勝は師匠の常盤山親方が「相撲取れそうか」と気にかけても「大丈夫です」と答えて、左ひざにテーピングを巻いて土俵に上がりました。

5日目の竜電との一番では鋭い立ち合いから突き押しで一気に押し出す、本来の貴景勝の相撲を見せました。